サービスや商品の売上が思った以上に伸びなやんでいる。これから新規事業をはじめようと思っている。今まで、マーケティングを疎かにしていたが、マーケティング強化を行いブランド力を向上したい。
このような時、まずなにに手をつけるべきだろうか。
企業は外部環境に影響をうける
業績が伸び悩む原因には、さまざまな要因があるが、ここでは外部環境が事業に影響を及ぼしていないか、まず確認すべきである。
新規事業をおこなおうとしている場合には、参入しようとする環境が事業を展開するにあたり、障壁となるようなものがないか確認すべきである。
ブランディングの観点からも、この外部環境がそもそも適していないのであれば、人々の心に届くようなブランドの構築は難しいのかもしれないのだ。
企業を取り巻く外部環境を知る
まずはじめに行うべきことは、企業の取り巻く環境が一体どうなっているか把握することである。
企業も環境変化に応じて適切に変化していくことが必要である。そのためには、外部環境いわゆるマクロ環境を分析しておかなければならない。
この時、ただ闇雲におこなうのではなく、効率的かつ網羅的に分析するために使用するフレームワークがPEST分析である。
どういった観点でマクロ環境を調査するか、調査した内容から自社にとってプラスやマイナス要因となる点を確認して、どれだけ影響があるか評価していく。
これにより、自社にとって有利となるもの、または脅威になりえるものの要因があるか分析することができる。
1.PEST分析とは
PESTは「Politics(政治的環境要因)」、「Economics(経済的環境要因)」、「Society(社会的環境要因)」、「Technology(技術的環境要因)」の頭文字をとったものであり、世の中の流れをつかみ、自社に影響のある環境を分析していくことである。ではこの4つの観点が具体的にどのようなことを表しているか確認していく。

1.1.Politics(政治的環境要因)とは
政治的な影響は企業活動に多大な影響を与える。
法律、政策、地方自治、外交などがこれにあたる。新たに施行された法律が、自社の事業に影響を与える法律であった場合、良い意味で影響をあたえる法律ならば良い。しかし悪い意味の場合、業績の悪化や事業の継続が困難になることも考えられる。
このように政治的な要因が自社に対してどう影響するのか理解しておくべきである。
最悪のケースも想定して、どれだけのインパクトがあるか調査、分析して備えておくことが重要ではないだろうか。
もしものことが起きても柔軟に対応ができるはずだ。
1.2.Economy(経済的環境要因)とは
国の経済成長率や消費の動向、失業率や株価や金利、為替レートなど経済的な要因のことをいう。
経済的環境の変化によって大きく影響をうけるのが、輸出入を行う企業などである。為替相場が変われば売上に密に影響してくる。
昔はそこそこ大きかったお菓子が、大人になって気が付いてみると少し小さくなっている。このような経験はないだろうか。
原料となるものの値段が変動したり、社会的に経済の状況が変わったため、同じ値段で提供するには小さくして販売するという、企業側がとった策であるといえる。
小さくするということは、顧客満足という観点からみればおすすめはできないが、やむ得ない策なのかもしれない。
1.3.Society(社会的環境要因)とは
社会的環境要因は人口、教育、文化、治安、宗教、消費者の嗜好など社会の環境をあらわしている。
近年、日本国内の社会的環境として大きな要因は人口減少ではないだろうか。
少子高齢化が進む日本では子供が減少し、高齢者が増えている。事業が特定の年代にフォーカスしているならば、各年代の割合は大きく事業に影響してくるはずだ。
また少子化は将来的に国内の人材不足になることが予測できる。 企業は国内の人材だけでなく外国人も採用することも考慮しなくてはならないだろう。事実コンビニなどのアルバイト店員は、外国人をみかけることが多くなっている。
このように社会の変化を敏感に察知し、状況に合わせて社内体制や仕組みを考えていかなくてはいけない。
また事業が社会的環境に影響を受けることがないか確認しておくべきだろう。
1.4.Technology(技術的環境要因)とは
技術的環境要因は新しい技術、ITサービス、製品技術、医療技術など技術がもたらす影響を表している。
なかでもITに関する技術は日進月歩で技術革新が行われている。例えば、10年前にスマートフォンが登場することを予想できただろうか。ほんの10年前には想像もしなかったことが、現実になっている。これによりWebサイトや携帯アプリ業界もガラケーとよばれる携帯に対応していたものを、スマートフォン向けへと切り替える必要があった。
今後は人工知能の発展が社会に大きな影響を与えると考えられる。 人工知能の発展により衰退する業種や、人員の削減が行われることだろう。
どういった技術変化に影響をうけるのか、技術はどのように変化していくのか調査、分析を行い、どう対処していくのか戦略を練る必要がある。
2.PEST分析を行う方法
PEST分析のPESTだけわかっても、具体的にどのように分析をおこない、どう実践すればよいかわからないのではないだろうか。
そこでPEST分析の方法をここでは紹介していく。
注意してもらいたいのは、弊社の方法であって、決してこの方法でやらないといけないわけではない点だけご認識いただきたい。
2.1.PEST分析の目的を明確にする
PEST分析をはじめるにしても、目的が定まっていなければ、分析しても最善の結果を得ることができないだろう。 まずは分析をはじめる前に何を知りたいのか、目的を明確にしておこう。
具体的には以下のような例が挙げられる。
- 新規事業のマーケティング・ブランディング戦略を立てるため。
- 自社をとりまく環境が、いったいどのような状況になっているか確認するため。
- 事業の売り上げが伸びない要因が、マクロ環境に起因していないか確認するため。
このようにまずは何のためにPEST分析を行うのか、事前に明確にしておかなければ曖昧な分析になってしまうだろう。
2.2.PEST分析の対象時期を決める
現在を調査・分析することは比較的簡単かもしれない。 現在であれば情報も豊富にあり、自社・事業を取り巻くマクロ環境も把握が容易である。
しかし、PEST分析で行うべきは、数年先の未来を予想して分析を行うことである。 なぜなら、自社・事業を取り巻く環境が今現在どうなっているかより、今後数年どうなっていくかが重要である。 状況によっては体制をどうしていくべきか、環境に大きく影響を受けるなら事前に対策を行っておくべきだからである。
未来については確定的な予測はできないが、予測を行うことで自社・事業の戦略を考えなおす大きな要因になるはずだ。
2.3.マクロ環境の情報を収集する
PEST分析のため、マクロ環境の情報を収集する。
情報収集は難しいことではなく、日々目にするニュースや雑誌から情報を集めることができる。
ニュース、雑誌のほかに、書籍、インターネット、セミナー、人から聞くことなどで大抵の情報を把握することができる。
より専門的な情報を必要としたい場合は、別途調査を行うか、専門の情報源を見つけ出す必要があるだろう。
2.4.PEST分析のマクロ環境変化を予測する
収集した情報が、PESTのどれに適合しているか分類したうえで、それぞれの環境がどう変化していくか予測すべきである。 当然変わらないこともあるが、多少変わることもあるはずである。
時間的かつ資源的な余裕があるならば、多少の変化の兆しも見逃さず予測すべきである。
自社・事業にとって優位になる変化が起こりえるならば、それに備えて万全の準備体制を作るべきであり、もし最悪な事態が少しでも予測できるなら、みて見ぬふりをするのではなく、事態が起きた場合の準備はしておくべきである。
3.PEST分析の環境変化による影響例
ここではPEST分析のマクロ環境の変化により、企業・事業が大きく影響を受けた例を挙げていく。 ニュースで取り上げられることも多いので、日々のニュースなどをPEST分析という視点からみると面白いかもしれない。
3.1.マクロ環境要因により乗り遅れた例
3.1.1.スマートフォンの普及後に参入したMicrosoft、FireFox
みなさんもご存じのとおり、スマートフォン業界のOSはGoogle、Appleが大半を占めている。
しかし、FIreFoxはFireFox OSを搭載したスマホを、MicrosoftはWindows Phoneを後発で発表している。
FireFox OSは2011年より開発をすすめ、日本でもFireFox OSを搭載したスマホが発売されている。 その後、売れ行きは伸びず、2016年7月にスマホから撤退している。
Windows Phoneについては、世界的なシェアでは5%にも達しておらず、業界を牽引しているとはいいがたい状態である。
それぞれシェアが伸びるかと期待されたが、FireFoxは撤退、Microsoftは伸び悩んでいるのが現状だ。
より先見的な視点でマクロ環境を分析・調査し、業界の動向を先読みしていれば、次なる一手をもっと早い段階で打つことも出来たのかもしれない。
もちろん、先読みしても技術的や資金、資源の問題もあるので一概にマクロ環境の先読みだけで、業界を牽引できるようになるわけではないが、より戦略的な一歩を歩みだすことができるのは、確かだろう。
3.2.マクロ環境要因を利用した例
3.2.1.子供向けプログラム専門塾
文部科学省より2020年から小学校での「プログラミング教育の必修化」が義務下される予定である。
これに伴い、近年プログラム学習を目的とした、プログラム学習塾なるものが増えてきているz
社会的環境要因を先読みし、数年後に増えるであろう需要を予測して準備をはじめているといっていいだろう。
このプログラム学習塾がどこまでの需要があるのか、未知数だが大きなマーケットになることは間違いないはずだ。 ただでさえITのエンジニアが不足している昨今、さらにIT技術は進歩してITエンジニアの需要はさらに拡大する。 それを危惧している政府は、プログラミングを義務教育の一環として組み込もうとしているのだ。
4.まとめ
PEST分析は頻繁におこなうことではないが、簡単なPEST分析によって得られる恩恵は大きいことはおわかりいただけただろうか。
目的をもってマクロ環境の流れを把握して戦略を練れば、良い意味で事業の流れを変化させることができるかもしれない。 逆にマクロ環境の流れを無視した場合、突然予測もしなかった事態に陥り、事業にとって良くないことが起こる可能性もあるだろう。
マクロ環境の流れを味方につけることができれば、事業の拡大、もちろんブランド力を付けることも容易くなるはずだ。 自分たちには関係ないとおもわず初心に戻って、今一度PEST分析を行ってみるのもいいかもしれない。